野球肘って何?
- physical-infinity
- 2017年5月23日
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“野球肘”という言葉は、野球関係者だけではなく一般社会にまで広く浸透し、普通に使われています。その実態は曖昧であり、以前紹介させていただいた“離断性骨軟骨炎”をイメージする人もいれば、“内側側副靭帯損傷”を1番にイメージする人もおり、人それぞれだと思います。今回は“野球肘”を整理し再確認できる場となれば幸いです。
《野球肘とは》
医学的に正確な表現をすると、“投球肘障害(elbow injuries of throwing athletes)”となります。1960年にアメリカのBrogdonが放射線科の雑誌に「少年野球選手の上腕骨内側上顆に分離・分節像や骨端線の開大像がみられる」ことを報告し、これを“リトルリーグエルボー”と名付けたといわれています。
《視点を変えて野球肘をみる》
成長途上なのか成熟した大人なのかで壊れやすい部位は異なってきます。軟骨期や骨化進展期では成長軟骨が傷つきやすく、骨端線開存期では骨端線(成長軟骨帯)が壊れやすくなります。骨化が完了すると、筋・腱・靭帯の骨への付着部や軟部組織そのものが傷ついたり壊れたりしやすくなります。
〜成長期(骨化進展期)の野球肘〜
①骨軟骨の外傷・障害
骨端の障害
骨端線の障害
裂離骨折や骨軟骨骨折
②軟骨組織の外傷・障害
ダメージは受けているが、障害が顕在化することは少ない
〜成長期(骨化完了期)の野球肘〜
①骨軟骨の外傷・障害
筋腱損傷(屈筋・回内筋・上腕筋症候群)
内側支持機構障害(側副靭帯損傷を含む)
外側側副靭帯損傷
神経障害(胸郭出口症候群含む)
滑膜及び滑膜壁障害
②軟骨組織の外傷・障害
・発育期の遺残障害
・変形性関節症
・過労性骨軟骨障害(疲労骨折)
*部位が分かりづらいですよね。わからない方は解剖をご確認ください。

野球肘は成長痛ではありません。様々な障害や外傷が含まれています。野球肘の病態を理解し適切な治療をするためには、1)関節の部位や位置、2)原因となる外力3)成長や経過といった時間、4)外傷・障害を受ける組織の4つが重要になってきます。
少し聞きなれない言葉もあったため、難しい点もあったと思います。今回の件で確認して頂きたいことは、単に野球肘と言っても色々な原因があるということです。しっかりと原因を追求し、きちんとした治療を行ってくださいね。
引用文献:柏口 新二 野球肘を知るために—さまざまな視点からみた野球肘—臨床スポーツ医学 2015 Vol32
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