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肘頭疲労骨折って知っていますか?

  • physical-infinity
  • 2017年7月18日
  • 読了時間: 3分

肘頭疲労骨折は投球肘障害のうち成人期に肘後方の痛みを生じる代表的な肘後方障害の1つです。しかし、疲労骨折の中でも極めてその頻度は低く、投球障害の中でも5.4%と非常に低いため、まとまった報告は少なく、治療法も確立されていません。今回は、骨端線閉鎖後の肘頭疲労骨折について紹介したいと思います。

〈発生機序〉

投球加速器からフォロースルー期にかけて肘痛が生じることや疲労骨折を有するものが「一球のエピソード」によって投球加速期に完全骨折へと至った例から肘関節の外反ストレスが原因と考えられています。疲労骨折患者の関節鏡所見では肘頭の骨端線より遠位尺側と肘頭窩内側にインピンジメントを示唆する滑膜の増生、出血班が観察されます。この部位に肘外反時の力学的負荷が集中し本骨折を生じるための「支点」になる部位と推測することができます。この部位は必ずしも肘伸展位ではなく、肘頭疲労骨折10例の関節鏡所見を検討してみると肘30〜60°屈曲位でこの「支点」と思われる部位が存在したため、過伸展が直接関与しているとは考えにくいのです。また、MCL損傷との関連性が指摘されており、機能不全をきたす場合は外反ストレスに対する制動力が落ちるためストレスを助長する恐れもあります。

〈症状〉

投球加速期からフォロースルー期にかけて肘後方の痛みだけでなく投球後の肘全体の「だるさ・違和感」といった症状を訴えることもあります。理学所見としては肘頭内側部の圧痛ならびに伸展時痛、外反ストレス時の疼痛を訴えます。なかには肘内側部の痛みを訴えることもあるため、MCL損傷、特に鉤状結節側の損傷と間違って診断されることもあります。

〈診断〉

単純X線では骨折線とその周囲の骨硬化像が特徴的な所見であるが骨折線の走行によっては見逃すこともあります。そのため、CT、MRI検査を行う必要があるのです。

〈治療〉

肘頭疲労骨折の治療におけるゴールは骨癒合だけではなく再骨折予防のための機能訓練と骨質の改善です。一般的に疲労骨折に対する治療は完全骨折に至った場合を除き原則的には保存的療法です。積極的保存療法を行うが、反応が悪く骨硬化が改善しない場合には手術を選択します。

肘頭疲労骨折は再発例も多く非常に難治性です。本疾患に関しては、確立した治療法もなく成績不良の原因も不明です。また、発生機序も不明なため、系統だった機能改善訓練も確立されていません。投球動作でも未解明な点が多いため、より多くのケースを多角的に検討する必要があります。

〈引用文献〉

川崎 賢三 他 肘頭疲労骨折に対する治療方針と課題 臨床スポーツ医学:Vol. 32 No.7

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